あまり裕福とはいえない大学教授が、40歳には本業外収入が本業文を上回るほどの蓄財に成功。その独自の蓄財投資法や生活哲学を記した一冊です。
貯める力 ~四分の一 天引きし貯金法~
そのままズバリ、お給料の1/4をはじめに貯金し、残りの3/4で生活するというもの。
満25歳のとき(明治25年(1892年))ドイツ留学から帰り、東京大学の農学部助教授になりました。
当時の年俸800円、そこから諸々引かれ、月の手取りは58円ほどだったそうです。58円の月給袋から、四分の一の14円50銭を貯金に引き抜き、残りの43円50銭で生活していくことになります。
現在価値に換算すると、おおよそ以下のイメージです。
- 月の手取り:220,400円
- 月の貯金額: 55,100円
- 月の生活費:165,300円
明治30年頃の物価と今の物価を比べると、今の物価は当事の3,800倍ぐらい、というデータから算出しました。他にも算出方法はありますが、今回は給与イメージが分かりやすい(いまと近い)金額になる3,800倍を採用しました。
結構どころかめちゃくちゃハードな貯金法です。「バビロンの大富豪」などでも『収入の1割を蓄えに』とあるのでその2.5倍です。
当時、現在のようなボーナス制度はなかったと思いますが、何かしらの臨時収入はあったと思います。その臨時収入はどうするかというと、全て貯金に回すそうです。
余った生活費を貯金に回す、というのはなかなか難しく、はじめから貯金分を引いたお金で生活する方法は、昔から取られていたようです。生活水準を後から引き下げる、途中から変えるのは難しいことですので、初めから決めてしまうのが一番楽で、一番効果的なのかもしれませんね。
なお四分の一預金を進めていく中で、最大の敵は『虚栄心や見栄』とのこと。
足るを知る、物欲だけでなく心の豊かさを求めていくことも、継続していく上で大切だと思います。
稼ぐ力 ~副業(アルバイト)にも精を出す~
助教授となった後、四分の一貯金開始とともに、執筆活動をはじめられたそうです。
「単なる消費面での節約だけでは十分ではなく、本職の足しになり、勉強になる事柄を選んで、本職以外のアルバイトにつとめることである」とあります。そのなかでも執筆活動はかなりの期間・ボリュームに及びます。
執筆活動は質・量にこだわり、1日1ページ(32字詰め14行)以上の文章で、著述原稿として印刷価値のあるもの、とあります。書いて自己満足するものではなく『提供価値がある=売れるモノ』を毎日書き続けていたそうです。著作を書かれた85歳時点でも続けられていて、370余冊の著書を出されています。
また、大学の本務以外にも、東京府、市、内務、文部、鉄道等の諸官庁嘱託や学校講師を掛け持ち、さらに余暇のある場合は民間実業家の財務や事業相談にも応じるなど、働けるだけ働きぬく、というのが著者のアルバイト精神だったようです。
残念ながらこの著作の中では、アルバイト収入の金額に触れられていません。ただ執筆活動だけでなく多方面にも参画されており、アルバイト収入もそれなりにあったと思いますし、本業の収入アップにもつながったことであろうと推察します。
本業は当然のことながら、ここまで副業にも長年力を入れ続けられる馬力の凄さに感嘆します。
増やす力 ~本多式株式投資法~~
四分の一貯金生活(倹約)とアルバイト(副業)だけでは限度があると語っています。
倹約と副業で『雪だるまの核』を作った後、ブレンタノ博士(おそらくドイツの経済学者、ルヨ・ブレンターノ)の貨殖訓を実践、『雪だるまを転がして大きく』していきました。
"財産をつくることの根幹は、やはり勤倹貯蓄だ。これなしには、どんなに小さくとも、財産と名のつくほどのものはこしらえられない。さて、その貯金がある程度の額に達したら、他の有利な事業に投資するがよい。貯金を貯金のままにしておいては知れたものである"
ただし断じて「投機」ではなく、「思惑」でもなく、あくまでも堅実な「投資」でなければならない、ともしています。
著者が投資先として選んだのは「株式」「不動産」。本多式株式投資法として「二割利食い、十割益半分手放し」が紹介されています。
株式取引は常に「先物」で、購入する現金を確保して当たりをつけた株式を購入。引き取り期限のくる前に『2割以上値上がりしていたら転売』して利益を確保する。
また値上がらなかったものはそのまま引き取り、引き取った後に長い年月を経て『2倍以上になれば半分を売る』ことで、そうすれば残った半分はタダで手に入れたことになるので、いくら暴落しようが損はしない、と。
投資先の実例として、日本鉄道株と山林の購入が書かれています。
- 日本鉄道株:20円50銭で払込のもの30株から。300株まで買い増したとき、払い込み額の2倍半で政府買上げ
- 秩父の山林:一町歩4円で8,000町歩。10,000町歩まで増やしたところ、日露戦争時の木材値上げで1町歩あたり280円になり、一部売却。
- 1町歩= 9,900㎡。 4.7町歩=東京ドーム1個分(46,755㎡)
- 10,000町歩=東京ドーム2,128個分 (広い…!!)
また株式の購入先は30業種以上に及んだそうで、昔から分散投資は基本中の基本と言ってよいのですね。
2つの考えを基本として、得た利益を再投資して雪だるまを大きくしていくことも、現在に通じる方法だと思います。
まとめ
資本主義経済において、資産の増やし方は今も昔も変わらない、と思いました。
- 貯める
- 倹約貯蓄(四分の一貯金法)
- 稼ぐ
- アルバイト(本業以外の収入)
- 増やす
- 株式・不動産投資(二割利食い、十割益半分手放し)
今回はお金を「貯める・稼ぐ・増やす」にフォーカスして感想を書かせていただきました。お金の貯め方増やし方のより詳細なお話(成功談や失敗談)のほか、人生観なども書かれていて、むしろそちらのほうが大変面白くて勉強になりました><。
変わったことは言っていない、当たり前というか、今更ながらに納得しながら読み進めました。20代の頃の自分に勧めたい一冊です。