戦艦「大和」「武蔵」の代名詞といえば『46cm主砲』ですよね。
とはいえ実物を見る機会があまりない(というか見れない)ため、今回改めて身近なものと比較しながら、46cm主砲のスペックを振り返ってみようと思います。
大和型戦艦のスペック
46cm主砲のお話に行く前に、まずは大和型戦艦のスペックについておさらいです。
全長263.0メートル、全幅38.9メートル。
基準排水量64,000トンもの巨体を、最高出力150,000馬力で最高速力27ノット(約50km/h)を叩き出します。
数字だけだとピンとこないので、比較対象に身近なものを持ってきました。
大和型戦艦と山手線車両を比較
▼山手線
Created by modifying "通勤電車E235系電車 山手線" (© illust AC)
▼大和型戦艦
Created by modifying "Yamato1945.png" (© Alexpl (Licensed under CC BY 3.0))
「山手線」(JR在来線)の車両は「1両あたり約20メートル」。「山手線」は1編成11両のため、1編成あたりの長さは220メートルです。
対して「大和型戦艦」は全長263メートルのため、山手線1編成よりも43メートルほど大和型戦艦のほうが長いです。
ちなみにサッカーグラウンドだと2.5面分の長さ(1面あたりゴールからゴールまでの長さが110メートル)に。
不動産基準の徒歩計算(徒歩1分=80メートル)に照らし合わせると、263メートル歩くのにかかる時間は「3分17秒25」、思ったよりも距離があります。
パッと思いついた所だと、靖国通りの「西武新宿線新宿駅前の交差点~新宿区役所前の交差点」までの距離です。
主砲スペック
「45口径46cm三連装砲」を「3基計9門」を搭載していました。
「45口径46cm」をざっくり解説すると下記のような感じ。
砲身の内径(内側の直径)が46cmで、砲身の長さは45口径(砲身の内径を●●倍。つまり46cm×45口径)で「20.7m」。
その砲身を砲塔1基あたり3門搭載しているので「三連装砲」になります。
直径46cmは、ドミノ・ピサの「ウルトラジャンボ」と同サイズです。
砲身長20.7mは、先程のJR在来線の車両1両の長さ(約20m)よりも、70cmほど長い。
そして「三連装砲」一基あたりの重量は約2,500トン。
自動車のレクサスが1台あたり約2,500kgのため、レクサス1,000台分の重量です。
(この例えだと実感が湧きにくいですね…)
当時の軍艦と比較すると、日本海軍の「吹雪型」駆逐艦の基準排水量が一隻あたり1,680トン、「陽炎型」駆逐艦が2,000トン、一番重かった「秋月型」駆逐艦の2,700トンですから、駆逐艦一隻分以上に匹敵します。
3連装×3基の重量は約7,500トンにもなり、主砲兵装だけで軽巡洋艦1隻分以上の重さになりますね!
ちょっと豆知識①
当時46cm砲は機密とされており、制式名称は「九四式四〇センチ(サンチ)砲」と呼称していました。
また46cm砲の砲身製造設備は呉海軍工廠にしかなかったため、長崎で建造される「武蔵」、横須賀で建造される「信濃」への主砲兵装輸送のために、運搬専用の給兵艦「樫野」が建造されました。
主砲弾のスペック
主砲弾は主に3種類(4種類)を搭載していました。
対艦用の九一式徹甲弾と一式徹甲弾、対空用(及び対地・対軽装甲艦用)の零式通常弾、三式通常弾です。
「九一式」「一式」などの数字番号は、制式採用された皇紀年度から取られています。
*九一式=皇紀2591年(西暦1931年)、一式=皇紀1601年(西暦1941年)
それぞれ大きさや重量が違っており、対艦用の九一式・一式が一番大きくて重く、全長1,980(一式は2,054)mm、重量1,460kgです。
一発あたり全長約2メートルと人間よりも大きいこともですが、重量が約1.5トンと、こちらも車一台分ぐらいの重さがあります(鉄と火薬の塊ですね)
射程距離
45口径46cm主砲から打ち出された主砲弾の最大射程は42,026メートル。
メートル数字だとピンときにくいですが、キロに直すと42.026kmです。
フルマラソン(42.195km)の長さよりも、169メートル短いだけです(より分かりにくいw)
仮に東京駅を起点にした最大射程は次の図のとおりです。
東京駅を起点にした直線距離で、JR各線のどの駅まで届くかというと、乗車時間換算で大凡40~50分先のところまで届きます。
※直線距離のため、実際の感覚とはズレるかもです。
- 東海道線=大船駅の手前まで(微妙に届かない)
- 中央線=八王子駅を一駅超えて西八王子駅まで
- 東北本線=桶川駅
- 総武本線=佐倉駅
- 常磐線=藤代駅
主砲弾の初速は780m/秒、時速に直すと約2,800km/h。マッハ2を超えます。F-15戦闘機の最高時速3,000km(マッハ2.48)に少し劣るぐらい。最大射程42,000メートルで発射した場合の弾着までの時間はおよそ98秒です。
最後に
重さ約1.5トンもある砲弾を、約42キロメートル先まで約98秒で届ける。
最大同時9発なので、遥か彼方から音速を超えて自動車9台が飛んで落ちてくる(かつ約40秒間隔)といった、まさに鉄の暴風と言う感じですね。
実際には最大射程で打つことはなく、想定していた決戦距離は約20,000~30,000メートルです。
大和型戦艦はその生涯において敵戦艦と打ち合うシーンは発生しませんでしたが、同決戦距離で自艦の主砲に耐えられる装甲も有していたので、もしも艦隊決戦が発生していたら、今とは違った歴史・評価を残していたことは間違いないですね。
2021年、戦艦「大和」の主砲を削り出した大型旋盤を救おう!と、クラウドファンディングが実施されましたね。
戦艦大和の主砲製造した大型旋盤、消失から救え|呉・大和ミュージアム
https://readyfor.jp/projects/yamato_15299
新着情報
https://readyfor.jp/projects/yamato_15299/announcements
目標金額「4,800万円」のところ、寄付総額「2億6,948万円」と、目標を大幅に超える寄付が集まりました。
当初は露天展示の予定でしたが、屋根付きの展示用施設も建造されるとのこと。
除幕式は2023年(令和5年)3月5日(日)に決まり、一般公開が楽しみです。
そして一度「大和ミュージアム」を訪ねたいと思っています。